5月5日(火)     大丹生(曇り時々晴れ)

 筏釣りには厳しい時期だが、だからこそ1枚の感動はある。なんとかチヌの顔を見たくて釣行先をいろいろ考えたが、風が強い予報だったので、大丹生のカセに行くことにした。当日は2時40分頃自宅を出発した。餌はボケ、アケミ貝、丸貝、オキアミ、サナギ、団子(小)を用意し、大丹生には5時前に到着した。1番船が出発したところだったので、二番船でカセに向かった。防波堤には5人の長竿師がいたが、そのうちの4人がカセの裏に狭い間隔で並んでいた。「これは先が思いやられる・・・。移動できるなら移動するんやけど。堤防は広いのに。でも仕方ないか。」大丹生のカセは防波堤にくっついているので、どうしても長竿師と競合してしまう。黒鯛のマスターによれば、先日もカセの釣り人が釣り上げると、すぐにウキがカセ周りに飛んできたそうだ。しかし、そういう条件を承知の上で、乗ったのだから、不安は押さえて釣りに集中しようと思った。

 まずはボケを落とし込む。微細なアタリがでるが、どうみてもチヌではない。回収したボケもボロボロになっている。オキアミも同様に皮だけかじられてあがってくる。「ハオコゼ系か・・・。」そうこうしていると、背後でビューンと長竿のあわせる音がした。見ると長竿が満月。上がってきたのは40pほどの乗っ込みチヌだった。「お〜、早くも釣れたか。やっぱり、いるな。可能性は充分ある。がんばろ!」活性は徐々に上がると思って、根気よく打ち返したが、なぜかハオコゼ系のアタリすらなくなっていった。魚の活性はゼロ。9時には疲れて帰りたくなってきた。長竿師達もアタリがなく、ぼやきが聞こえてくる。状況は良くない。しかし早々に近くにチヌがいることは証明されている。何かの間違いで口を使うチヌに遭遇することを期待して釣り続けた。とにかく、餌のローテーション、釣り方、団子投入など、工夫してがんばったが、オキアミすらとられない。

 13時、底には見切りを付けて、中層を狙うことにした。上げてくる餌が表面の海水温より結構冷たいのも気になっていた。中層といってもどこを狙っていいのかわからなかったが、底から2ヒロから3ヒロほど上を釣る。やはり底より魚の反応はある。オキアミやボケでは小さなアタリがでる。1時間ほど粘ったが、あわせられるようなアタリもないまま、オキアミやボケがかじられるだけの時間が経過した。ただ、チヌがいるとしたら底より中層の可能性は高いと考え、その後は軽いオモリかオモリなしでの落とし込みを多用することにした。そして、クライマックスが訪れた。

 14時半、半貝にBのオモリで落とし込んだ。糸を手繰り上げての落とし込みだったので、しばらくして穂先に負荷がかかり始めた時は着底だと思った。すると穂先がそのまま更にお辞儀をし始め、そしてゆっくりと海中に入っていった。一瞬、何が起こったのか判断できなかったが、どう考えても普通の状態ではないと判断した脳が反射的にあわせを指示していた。重量感のある手応え。「やった!チヌや。」やり取りが始まった。良型間違いなしの引きだった。二度ほどの強い締め込みをかわす。「年無しか・・・、いやそこまでないが大型や。」半分ほど上げた時に再び強い締め込み。「一番強い引きや。これは大きいぞ。」糸を多少引きずりだされたが、何とか持ちこたえて更に巻き上げた。そろそろ姿を現すかと思った矢先、穂先がはねた。「ハリはずれ・・・・・・」背後からは「あ〜あ、もったいない。」との声。痛恨だった。悔しくて悔しくて仕方なかった。それから、さよならホームランがダブルプレーになったような気がしてがっくりした。冷静に戻るため、釣りを再開したが、自らポイントを壊した上に、ウキが頭の上を飛んでこないまでも似たような状況が展開され、アタリはでなかった。

 結局、18時まで粘ったが、全くアタリなく撃沈した。残念な釣りだったが、ひとときではあったが興奮できたのでよかった。陸に上がってしばらくするとがじろうさんが来てくれた。ひとしきり話した。がじろうさんがわざわざ持ってきてくれたDVDをおみやげに帰路についた。厳しくともまた貴重な1枚を目指して釣りに行こうと思う。そのうち大丹生カセには必ず、リベンジしたい。

釣果:今度はばらさない。