11月15日(日)     大丹生(晴れ時々曇り)

 雨後で濁りが入っていると思い、大丹生に行くことにした。4時過ぎに自宅を出発し、黒鯛釣具店で団子(中)、サナギ2袋、丸貝小2袋、オキアミを購入した。大丹生には6時前に到着したが暗かった。しかし、用意をしていると西田のおじさんが出てこられ、まだ薄暗い中出船した。日曜日だが、筏と防波堤に櫻井の釣り人が各2人ほどいるだけで、西田渡船のお客さんはその時点では私だけだった。カセに乗ってみたい気もしたが、濁りの入った好条件だったので、落ち着いて釣りのできる筏にした。真ん中の避難箱付きの筏に乗り、まずはイガイの落とし込みから始めた。あまり期待はしてなかったが、やはり反応はない。30分ほどイガイや丸貝の落とし込みを行うが早々にあきらめた。魚の活性は高いと踏んでいたので団子で寄せることにした。しかし、団子を投入しても魚の活性はたいしたことはない。イガイ、丸貝に加え、サナギも無傷。オキアミならとられるが、よいアタリは一切でない。皮が残って上がってくる。「ここのところ、人も入ってないから少し時間はかかるかも。根気よくやろう。」

 8時過ぎ、オキアミで十分釣りのできるような活性だったが、団子アタリがでた。餌のサナギは無傷だったので、どうやらボラが寄ってきたようだ。「お!これは期待できるかも。」ボラの団子アタリが激しさを増し、やがてサナギがかじられ始め、そしてチヌと期待したのだが、そのボラの活性が全然上がらない。思い出したように触ってくるだけ。でもいつかチヌが登場すると信じて、餌持ちの悪いオキアミはやめて、サナギを中心に釣り続けた。同じように時々ボラの状況が続く。時刻は10時になり、そして11時なった。釣れる気があまりしなくなってきた。おまけに終始強い風が吹いている。長浜ならまた大変なことになりそうな風だった。太陽が出ていたのでまだよかったが、寒い。

 12時頃からは当日何度目かのボラアタリが出始めた。オキアミでやるとフグやチャリコなどが釣れる。そして今回のボラアタリはその後、徐々に激しくなり、12時半には非常に強いものとなった。「おーーー、これは本物か!」ところがピークは一瞬で終わり、すぐにトーンダウン。しかもゼロに・・・。そしてオキアミですら時々上がってくるような低活性になってしまった。14時、前日に見た釣り番組を思い出した。この時期のグレ釣りは1日1回のアタリをとらえる厳しいものだと解説が入る。そのわりに画面での釣り人は大バラシを連発していた。「いいな〜、1日1度と言いながらあんなにアタリがあって。こっちは1度もないし。1度もないんやから釣れへんわな。」この時間帯からはメインの餌はサナギからオキアミにかわっていた。14時半、オキアミを落とし込んだ。とられることなく着底。そして、着底後もアタリはない。「全然やん・・・。」放心状態に入る。すると突然、穂先が突っ込み、リールが逆回転した。「うぉ!」あわててあわした。「乗ったか?・・・やってしもた。餌がオキアミやから、チヌとは限らないけど、いいアタリやったな〜。1日1度のアタリがあったやん。見事にのがしたけど。あかんな〜。ほんまにあかん。」そしてまた、全く静かな海に戻った。強い風の中、その後もせっせと打ち返した。15時半、団子が無くなった。サナギにはアタリなし。オキアミはいつの間にかボロボロ。チヌの気配はない。16時頃からは丸貝やイガイの落とし込みにかける。やはり反応はない。16時半、もう逆転はないと思った。最後の望みをかけて、筏の裏面に移動し、昼頃にイガイを撒いておいたポイントにイガイを落とし込んだ。着底後も何度か誘い上げてみるがアタリはでなかった。「あかんなもう。帰ろ。」そして筏の上に立ってふと沖合を見つめた。冷たい北風が顔に吹き付けたが、寒さよりすがすがしさを感じた。そこには何度も見てきた大丹生の夕暮れの風景があった。この風景は昔と変わらないし、これからもきっと残っていくと思った。そして今ここで、筏の上に立ち、遠くを見ている瞬間がとても大切だと思った。何を生み出すわけでもなく、誰に評価されるわけでもない。ただ、今日、釣りをしたこと自体が貴重だったと思った。

 釣り座に戻った。隣の筏の釣り人がちょうど上がられるところだった。「よし、やめ。」片づける合間にもう1投だけしておこうと、一番大きな丸貝を付けて右手で落とし込みながら、左手で片づけを開始した。無理な体勢で落とし込んだので、途中で糸がひっかかった。取り敢えず底までおろそうと、片づけをやめて再び落とし込む。はっきりと覚えていないのだが、着底直前か直後に違和感を感じた。たぶん、穂先への負荷がなくなったように思う。ゆっくり上げると、重みを感じてその直後引き込んだ。「おお!魚や。」すかさずアワセ。一瞬おいて二度アワセ。引きは強い。「チヌや。やったぞ!」ここからは必死だった。前方にチヌは出ていたので、切られる心配はなかったが、いつハリがはずれるか不安だった。あせりながらも慎重にやりとりした。長く感じたが、やっとチヌが浮いてきた。「でか!」無事すくった時は年無しかと思ったが、そこまではなかった。しかし、とてもうれしい1枚に、筏上で思わずガッツポーズしたいくらいだった。写真をとり、もう一度丸貝を落とし込んだところで、おじさんが最後の防波堤のお客さんを岸に運んで行くのが見えた。時合いのような気はしたが、納竿することにした。途中で止めたのが誘いになったのか、中層で食っていたのか底なのか、アタリもはっきり思い出せず、この釣果を次に生かすには残念だが、最後にクラマックスがあり、十分楽しめた1日だった。

 当日であるが、筏にはあと3人おられたが、ほとんど釣れていなかった。防波堤の方では2,3人の釣り人で、3枚ほどチヌが上がっていたそうだ。水温の急激な低下があったのか、考えたほどの活性はなかったが、まだまだ大丹生は良型がいるので、これからも期待できると思う。ところで、大逆転の1枚だが、お腹の中はイガイでいっぱいで、後はカニと丸貝が少量入っていた。あれだけ根気よく打ち返したのに、サナギは皆無だった。イガイの落とし込みに徹した方がよかったのか。釣りは難しい。



釣果:1枚(45p)