2月7日(土)    大丹生(晴れ)

 年末も釣れたし、この冬は大丹生に多くのチヌがいるはずと考え、行くことにした。当日は4時50分に起床し、5時過ぎに出発した。洛西ニュータウンへの細い抜け道を走行中、一瞬目を前方からはずして再び戻すと、暗闇の中に人がいてビックリした。「あぶな・・・。普段は歩行者が歩かない道やのに。はねるところや。」そう言えば、前日の夜、初めて金縛り(?)のような体験もした。「今日は気を付けないといけないかも。」そんな気がした。舞Iに入ったのは、7時をまわっていた。そろそろ、釣り場が近づいてきたと考えていると、前の車が右にウインカーを出して減速し、ヒヤッとした。その車は右に曲がる道などないところで、対向車線のガードレール向けてに右折しようとしたので、予期できなかった。「なんなん、あの車・・・、危ないよ。」

 大丹生に着いたのは7時半前だった。クレイブリッジの所は凄い霧だったが、大丹生はきれいに晴れていた。気分はよかった。釣り人は筏も防波堤も誰もいない。「おーー、貸し切りか。」車を降りて、防寒着を着ようとするとチャックが壊れた。「・・・。上から漁師合羽着るからいいけど・・・。」西田さんに挨拶し、筏に渡してもらったのは7時40分頃、ゴミを撒いて牡蠣で釣りを開始したのは8時頃だったと思う。期待の第1投。穂先を見つめていると、着底後しばらくして、小さくコツとあたった。「うん!」しかし、それ以後反応はない。餌がとられていた。「チヌか?」第2投、今度も反応がある。またも餌を取られた。ハリスに噛み跡があったので、これはフグ。次も反応がある。モゾモゾと触ったあと、見事に引き込んだ。「よっしゃ!」素バリだった。というより、ハリがない。「フグか。」その後も1投ごとにアタリがある。いろんなアタリがでて、思わずドキッとしたりもするが、すべてフグだった。ハリの付け替えが大変なのと、この調子だと牡蠣がもたない気がした。ただ、チヌは必ずいると感じた。「この状況ならきっと釣れる。」この段階でそう思った。

 その後はイガイを試したり、探り釣りをしたりしたがチヌのアタリはない。9時20分、たまたま大丹生に牡蠣を買いに来られていた海坊主さんから電話。海坊主さんには自慢のスカリを作ってもらった。「がんばろ」。時刻は9時40分、貴重な缶コーヒーをひっくり返した時に気が付いたのだが、練炭が暖かくない。見ると火が消えている。コンロを出して風を送り込んでいると、もともと劣化はしていたのだが、コンロの足がもげた。「またか・・・、今日はトラブルが多い。こういう日はボウズか、大釣りのどっちかのような気がする。」そう思った。10時過ぎに西田さんに来てもらって、一旦陸に上がり、缶コーヒーを買い、バーナーを持って、再び筏に戻ったのは10時40分頃だった。結局、バーナーで何度点火しようとしても、練炭に火はつかなかった。「なぜ?でも暖かいし、何とかなるやろ。」天気は快晴であった。

 その後も、朝ほど激しくはないが、フグアタリが多く出た。11時半、やや前方に牡蠣を投げると、しばらくして、またアタリ。当日はチヌアタリのような、フグアタリが連発していたので、とにかく取られても、かけられる押さえるアタリがでるまで、待つことにしていた。やがて小さく引き込んだのであわせた。竿がドンと止まった。「チヌや!」十分な重量感が伝わってくる。「でかいぞ!」一発目をばらすのは、とてもイヤなので緊張したが、怖がらずにやり取りした。やがて良型が浮いてきて、タモに入った。「よし、釣れた!」48.5pだった。

  

 写真をとって、再び牡蠣を落としこむとまたアタリ。今度もチヌだった。少し小ぶりに見えたが、40pあった。まだまだ、いそうに思ったが、その後アタリは連発しない。たまにそれっぽいアタリはでるが、かからない。

  

 1時間半が経過し、時刻は13時40分になった。しつこい小アタリにあわせた。直後に凄い重量感を感じるや、魚が猛然と引っ張った。思わず糸を出す。すぐに巻くと、また突っ込まれ糸がでる。その後は何とか竿の弾力で引き上げる。大物であるのは間違いなかったが、引きがどうもおかしい。ただ、ここまで強いのはチヌ以外考えられなかった。やがて海面下に白っぽい魚体があらわれた。「でかい!」また猛然と魚が突っ込む。何とか耐えて巻き上げるが、その時の魚の姿を見て、違和感を感じた。「魚の向きがおかしい。こっちを向かない。糸が体に絡まっているのか。早く上げないとばれそうや。」そして次の巻き上げで、何とかすくった。ハリが尾にかかっていた。「なぜ?こんなところにかかって上げた一番の大物やな。」何とか50pに届かないかと、角度を変えてはかったが、49pだった。しかし追加出来て大満足。そして次の1投にもアタリ。今度はそれほど大きくはないが連発だ。「あれ。」上がってきたのは、アイナメだった。大丹生で釣れるカレイやアイナメは良型が多いが、釣れたアイナメはポン級どころか、40pあった。チヌでなかったのは残念だったが、まだ釣れると感じていた。

  

  

 ふと周りを見ると、釣り人は私だけだが、牡蠣の漁師さんが10人も作業されていた。チヌにとってはパラダイス。でもこれだけ、いたるところで牡蠣作業をするとチヌが分散することは確かだと思った。

  

 もう一枚、大型を目指してがんばるが、追加して以後はどんどん魚の活性は落ちていった。餌が残る時間が長くなる。ただ、穏やかな海面を見ていると、何となく突然アタリがでるイメージが浮かんだ。実際、2度ほどかかけられそうなアタリもあったが、のらなかった。各筏で作業されている漁師さんが撒いたゴミに寄ってきたチヌがいる場所に餌を放り込んだら、おそらく当たってくると思ったが、試さなかった。16時以降は集中力が低下していた。そして、16時半過ぎ納竿とした。陸に上がって、写真を撮り、チヌを1枚は放流し、2枚をしめた。クーラーに魚を入れて帰ろうとすると、小型の包丁が無いことに気がついた。包丁をおいていた場所に、自分がしゃがんでいる。間違いなく、自分で海に蹴落としてしまった。「まったく、今日は・・・。長年使っていたのに。」

 大丹生を出発したのは17時半だった。当日は帰りに職場の先輩のご実家に寄る約束をしていた。ところが約束の18時には到底間に合わなかった。いつもなら帰り道は、当日の釣りのことを色々考えるのだが、何も浮かんでこなかった。それより自分に対して、「何やってるんや。大丈夫なのか。」そんな心配が起こった。心が動かず、今日一日は一体どんな一日だったのか、よくわからなくなった。実家到着は18時半だった。持ち帰った牡蠣を発砲スチロールの箱に詰めて、チヌを1枚さばいた。そして先輩の奥さんに挨拶して帰ろうとした。すると奥さんから、上がっていくように言われた。いつも夕飯時に行って、たらふく食べているので、今日はすぐに帰ろうと決めていたが、あっさりその決意を覆してしまった。部屋に上がると、厚かましくいつもの場所に座り、家族より先にご飯を頂いた。姪っ子さんの料理はとても美味しかった。それに何より楽しかった。「ゆっくりしていって下さいね。」と言われると、いくらでもいそうになる自分がいたが、20時過ぎ帰ることにした。先輩のご家族に挨拶し、再び夜道を走りながら理解した。「今日のすべては、先輩の実家で過ごしたこの1時間のためにあったんだ。」と。体は疲れてはいたが、心が澄んだ気がした。

       

釣果:3枚(49・48.5・40p)