8月29日(木)   千歳(曇り一時雨後晴れ)

 夏最後の釣りは千歳に行くことにした。予約したときの天気予報では結構な雨が降るようであったが、覚悟してやろうと思った。ただ、天気予報は前日の夕方くらいからよい方に変わってきた。当日は黒鯛釣り具店で団子(大)、サナギ、オキアミを購入し、5時半前に釣り場に到着するとすでに船頭さんが待ってくれていた。3番に乗って5時半過ぎから釣りを開始した。天気は曇天で暑くない。第1投はオキアミでやるとすぐにアジが釣れた。流石にオキアミではもたないと考えて、餌をコーンやサナギに代えるとアタリはでない。

 状況が変化したのは7時前からだった。サナギへのアタリが出始めた。チクチクした極小のアタリがでてサナギがなくなる。犯人はおそらくカワハギ。そしてたまに一気に穂先が引き込まれてチャリコが釣れる。この調子だとチヌにもそのうち餌が届くだろうと思ったが、30分ほどで無反応な状態になった。そして1時間ほどするとまた同じようにカワハギのアタリとチャリコが釣れる。底でアタリが出るときは、表層にはコノシロが現れる。コノシロが消えると底のアタリもなくなる。このようなことが3回ほど繰り返されているうちに時刻は10時を過ぎ、11時をまわった。船頭さんが私しか釣り人がいないのに、午前中2度目の見回りにこられたので、予定通り15時で止めるのでもう見回りは必要ないと伝えた。

     

 11時半頃からはまたカワハギのアタリが出始めたが、釣れる気がしなかった。千歳は他の舞鶴の釣り場より深いので、もしかしたらアタリを見逃しているのかと疑ったが、チャリコは明確なアタリを出しているので、やはりチヌがいないのだろうと思った。ほぼボウズを覚悟した12時、サナギハリス団子が着底するとすぐに細かいアタリがでた、そのまま待つとすぐにおさえてきた。典型的なチヌアタリにびっくりしたが、手は勝手に反応していた。「ばれるな!」と念じながら、やっとの思いで上げたのは40強のチヌだった。千歳では、印象に残る釣りはしたことがないが、この1枚はうれしかった。納竿まではあと2時間半ほど釣りができる。何とか追加しようと欲がでてきた。ところがまたアタリが遠のいてしまった。

     

  時刻は13時をまわった。当日は薄曇りで小雨が少々降った程度で、晴れ間もでるような天気だった。ところがふと振り返ると、空の一部の低い位置に見たこともない不気味な雲が浮かんでいたので、写真を撮った。

    

 雲のある方角は北だったので、そのまま東へと流れて行くと思った。ところが、しばらく経って北の空を見ると、その雲はこちらに移動しているように見えた。「見間違いか・・・、南には来ないやろ。」さらに10分が経過した。「明らかにこっちに来てる。」近づくと遠目に見るより雲の黒さは薄くはなっていたが、どう見ても異様な雲だった。「あの雲は雨を降らしそうやな。雷は大丈夫やろか。」いつでも撤収できるようにある程度片付けた方がよいと思った。片付けに入ると、港から呼んでもいないのに、船頭さんが船を出そうとしているのが見えた。ことの重大さがわかった。「やばい。」戦慄が走った。急いで小物をバックにたたき込んだ。すると1分もしないうちに一気に突風が吹き付けてきた。台風並だった。合羽が吹っ飛んだ。立てない。穏やかだった海はあっという間に白波が立って、筏は大きく揺れた。渡船屋さんの船が筏横に来て船頭さんが投げ入れよと言っている。スカリがひっかかってあせる。竿はそのまま投げ入れ、やっとの思いで船に乗った。船は風に向かって港へ前進し、5分ほどで戻った。そして陸に上がって、7,8分で今度は強烈な雨も降ってきたが、その時は車の中だった。

 車を道路脇に止めてしばらく一休みしながら大いに反省した。自分はある程度経験も積んで、危険察知能力があると思っていたが、全然ダメであった。異変を感じたら即撤退を徹底しないといけないと痛感した。それと今日、千歳を選んで幸運だったと思った。あの親切な船頭さんがいなかったら、どんな怖い目にあったかと考えるとぞっとした。井上渡船さんには感謝してもしきれない。千歳は船着き場から筏の距離が近く、さらに船は大きくどっしりしているということも幸いした。帰路、西舞鶴付近まで来ると、雨の後もなく、あの嵐を想像できるものは何もなかった。一部限定、だから自然の怖さはなかなか広まらないのかもしれない。世話になり、渡船代までまけてくれた船頭さんへのせめてもの恩返しにまた千歳には来ようと思った。

釣果:1枚(41.5)