6月15日(土) 前島埠頭(晴れ)
このホームページを始めたのは、彼のおかげかもしれない。日本海側のいろんな釣り場に雨の日も、風のにも、雪の日も付き合ってくれた。そして彼も私も筏釣りがどんどん好きになった。職場がわかれてから一緒に行く機会が減り、いつしか年賀状のやりとりだけになっていった。5年ほど前だっただろうか、彼が大病を患ったことを知った。その後、連絡を取り、もう一度釣りに行こうと約束してから、数年が経過した。約束が実現したのは去年の冬。冷たい雨の中、2時間ほど海に糸を垂れた。そして、今回、再び釣りに行くことになった。彼は筏に乗ることが厳しいので、当初は上佐波賀あたりでのウキ釣りを考えていたが、どこでやったらよいのか、見当がつかなかった。がじろうさんのアドバイスもあり、前島埠頭に行くことにした。釣り方はもちろんウキでと思っていたが、友人が望んだのは短竿だった。
当日は午前5時半に友人宅に行き、黒鯛釣り具店には7時頃到着した。2人でオキアミ2パック、サナギ2袋、団子(中)1個を購入して、前島埠頭に向かった。前島埠頭到着後は釣り座を湾口にむけてとり、8時頃から釣りを開始した。水深は5メートルほど。団子を打ってオキアミを落としこむのだが全くアタリがない。チヌどころか、外道もいない。お手上げ状態だった。1時間が経過した頃、バイクに乗ったおじさんが我々の横に来られた。私が会釈をすると「自分は耳が聞こえない」と言われたあと、聞き取りやすくするため、一言一言ゆっくり、そして一生懸命話してくれた。自衛隊寄りの岸壁でチヌが3枚釣れていること、この釣り場ではフェリー乗り場周辺で落とし込みでも、チヌが狙えることなど、我々の知らない情報を教えてくれた。おじさんが立ち去った後、すぐに自衛隊側への移動を決断した。20分もしないうちに、少し離れた場所の釣り人がウキ釣りで30p級のチヌを釣られたのが見えた。「チヌ、いるんや。」と思ったが、我々の方は微細なアタリでオキアミの頭が吸われる程度で、チヌからは程遠かった。「あかんな〜。短竿では無理なのか・・・。いけそうな気もするけど。」
時刻は10時半をまわった。雨がしとしと降り続いているうえに、オキアミへの細かいアタリにも、閉口気味だった。「もうコチョコチョしたアタリはええわ。」餌をサナギに代えて、ちょい投げした。「あ〜あ・・・」1分ほど経過しただろうか、いきなりコン、グゥーと穂先が曲がった。「うぉ、なんや!!!」ワンテンポ遅れたが、咄嗟にあわせた。「おおおー。これはチヌや。」当たると思ってなかったので、その驚きを引きずりながら必死にやりとりした。「結構強いぞ。いつ上がってくる。どこや。」海面がギラッと光った瞬間だった。穂先がはねた。「えええー、くっそーー。」30台中ごろのチヌのように見えた。ばらしたのは非常に残念だったが、それより岸壁から短竿で目の覚めるアタリがでたことが、新鮮な驚きだった。「短竿で釣れるんや!」11時、今度は直下で釣っていた友人の竿が曲がった。引きからするとチヌだと思った。「おぉ、竿立てて!」魚は右に走る。「あぁ!」ばれた。悔しがる友人。残念だったが、団子にチヌが寄ってきたのは明かだった。二人とも俄然やる気がでたが、すぐに潮止まりとなり、気配がなくなってしまった。
14時頃に再び潮が動き出すと、穂先に反応が出始めた。チヌかどうかはわからなかったが、サナギがかじられる。午前の時合いより更にチヌが釣れそうに感じた。団子にもボラらしき反応もある。「これはいける」しかし、潮の流れに乗って藻などのゴミが大量に流れてきて、ラインに触れたり絡んだりするためにせっかくのアタリをなかなかとらえられなかった。すると突然の友人があわせた。「お!チヌや。落ち着いて!」一定のペースで巻く友人。やがて海面下で魚が光った。私のタモに収まったのは33pのチヌだった。すぐに友人にチヌを渡した。「やったー!」6年ぶりのチヌを手にした友人の喜びを見ると、私も満足感でいっぱいになった。
その後も気配は十分あったが、かけられずに再び潮止まりとなり、アタリはなくなった。粘れば夕方にもう一度チャンスがくると思ったが、雨もまた降ってきたので、15時に納竿した。フェリー乗り場で一休みする友人を待っている間、駐車場から小雨の降る湾を見ながら思った。「ゆっくりできて、穏やかな時間だった。」15時半、帰路についた。釣果もうれしかったが、埠頭からのかかり釣りは、思っていた以上に楽しかった。まだまだ埠頭からのかかり釣りは工夫の余地があり、また行きたくなったことも大きな収穫だった。今度は友人と爆釣したいと思う。
釣果:新たな一歩