9月28日(土)   大丹生(曇り)

 3時40分に起床し、4時前に自宅を出発。昔は睡眠時間が少ないと帰りに睡魔が襲ってきたが、今は朝一から眠い。少し秋めいてきて、今回は結構楽しみな釣行なのだが、興奮するという程ではないのだろう。黒鯛釣り具店で餌を買い、大丹生には5時40分頃到着した。出船し、沖側の筏に乗って釣りを開始したのは6時過ぎだった。まずは仕掛けを作る前に団子を投入し、第1投はオキアミでやった。オキアミが無傷で戻ってきて、拍子抜けした。団子をどんどん打ち返せば、すぐに変化がでると思ったがアタリはない。たまに小さなアタリがあったと思うと、取られたのはオキアミの頭だけだった。「盛期にこの活性か・・・」表層にも外道の姿は見えない。釣り始めて1時間が経過した7時、無傷でオキアミコーンが上がってきたのを見たとき、この活性の上がり方だと無理だと思った。幸い防波堤には先端付近に一人釣り人がいるだけだったので、少しでも活性の高い防波堤のカセに動こうと思った。船頭さんに頼んで、迎えに来てもらった。

 7時半よりカセでの釣りを開始した。カワハギやフグが底にいるようで、10分もしないうちにコーンやサナギがかじられ出した。筏とは全然活性が違い、ある程度やれば、チヌが釣れると思った。そして時間の経過と共に特にコーンへの反応がよくなった。サナギはコーンより残ることが多かったので、コーンが瞬殺されるときはサナギを多用し、サナギもボロボロになる時間帯は丸貝やイガイを使った。しかし、チヌらしきあたりは1度もでない。活性がある程度あるのに、全くチヌの気配も感じられない原因がわからなかった。実際、80メートルほど離れた防波堤の先端付近でかかり釣りをしている人の竿は時々曲がっている(後で船頭さんから聞いた話では40㎝台を5枚、大型バラシが2回らしい)。「チヌの活性はあるはずなのに・・・。」結局釣れない理由は、チヌがいないか、カセ下に何らかのチヌの嫌う障害物があるとしか考えられなかった。どちらも絶望的な原因なので、考えれば考えるほど、精神的な疲れが蓄積された。「毎回毎回、なんでこんな釣りばかりなんや。つらい・・・。」

 昼をまわり、14時頃になると他の釣り人達は納竿し始め、防波堤の釣り人も14時半に帰られ、15時になると大丹生で釣りをしているのは私だけになった。釣れる気は皆無。やけくそみたいなものだった。朝、団子の大を買うと、黒鯛のマスターに「今日は気合いが入ってますね!」と冷やかされたのを思いだして、一人で苦笑いした。「気合いの現れがラストの一人か。」

 15時半、団子を全部撒いて後は落とし込みをすることにした。コーン、サナギ、丸貝、イガイ、全部試した。団子が切れて、外道が減ったのか、コーン以外は触る魚もいなくなった。16時、後片付けを開始。「なんで、こんな結果になったんかな~。つまらんな~」船頭さんに電話しようかと思ったが、納竿は16時半なのでそこまでやることにした。ラストの1投で丸貝を放り込んだのが16時10分頃、16時20分には竿を片づけるだけとなり、一休みでクーラーに腰掛けると目を疑った。穂先にアタリがでている。あまりにも意外だったが、なぜか慌てなかった。ワンテンポ待つと、穂先が押さえられていき、海面下に入るまで待ってアワセをいれた。確かな手応えがあった。ただ、重さの割に引きが強くなかったので、本当にチヌなのか半信半疑で巻き続けた。すると急に魚がカセ下から目の前に出てきた。チヌだった。しかも良型。タモはすでに片づけていたが、網の部分は近くにあたので、それですくおうと思った。しかし小さく折りたたんだ網は片手ではきれいに広げることができなかった。単にチヌに金属片を近づけているだけで、すくえる可能性はほぼないと思った。仕方ないので網を置き、今度はバス釣りのように手でつかむことにした。鋭いエラを触るわけにはいかず、口に指を入れようとしたが、2度、3度と逃げられ、カセ下にハリスがすれそうになった。「手も無理や。」最後に目に入ったのが団子の空箱だった。空箱は浮力があって網のようにするのは難しかったが、2度目くらいに何とかすくった。カセに引き上げた空箱に入ったチヌを見ると滑稽だった。顔を上げると30メートルほど離れた岸にいる釣り人が手を突き上げて祝福してくれた。見事なアワセだったと声をかけてくれた。すごくうれしかった。きっと魚を空箱ですくう釣り人は見たことはなかったと思うし、ちょっと笑ってしまったと思うけど。

 魚は写真を撮ってすぐに放流した。向こうには船頭さんの船が近づいてくるのが見えた。最後の最後で経験したことのないドラマで疲れが吹っ飛んだ。長年の経験や知識を生かしてドラマを引き起こしたらベテラン釣り師として格好が付いたかもしれないが、まあこんな結末が自分らしいかなと思った。

      

釣果:1枚(46.5)