7月24日(土) 山弘(晴れ)
それは4時50分頃にウスイ釣り具店を出発し、舞鶴の市街地に入った時に起こった。信号待ちをして発進すると前の車が急に中央線の方に動いた。路上にある何かを避けたと思った。すると車の影から、歩道方向から道路中央に向かって激しく動く生物が現れた。薄暗い上に一瞬のことだったので、それが何かはわからなかったが、羽を負傷した鳩のようにも見えた。前の車がはねたのか、もっと前の車がはねたのかはわからなかった。20メートルくらい進んだかもしれないが、羽の傷ついた鳥ならせめて歩道に戻そうと思った。それが何になるかはわからなかったが、ほっておけなかった。Uターンして戻ると、その生物は対向車線の歩道よりで動かなくなっていた。車から降りてもう一度、遠目に確認したがやっぱり動いてなかった。諦めようと思ったが、その生物が何で、どうなっているのか、見届けようと思った。数歩近寄るとそれは子猫だった。7メートルほどの距離があったので、しっかりとは見えなかったが、それでも頭部に致命的な傷があるのはわかった。直視できなかった。「もう助からない。」そう思って車に戻ろうとした時だった。死んでいると思った子猫が顔を上げた。「え!」そして、すぐにまた横たわり動かなくなった。人間の気配に反応したのか、それとも助けを求めたのか、どちかにしても再び動かなくなった猫の側に行き、尻尾を引っ張って、歩道付近に猫を動かす勇気がすぐにでなかった。車に戻り信号がかわったので進み、再びすぐにUターンした。その際、乗用車1台とトラック1台とすれ違った。子猫はトラックに踏まれたのではないかと思った。予想は当たっていた。もしかしたらまだ虫の息があったかもしれない。「最後にトラックか・・・。」私はちょうど30年ほど前、暴走車に跳ねられた猫を道路の真ん中に走って拾いに行った青年を見た。30年経っても私はその青年に追いつけなかった。余りにもあっけなく消えた命を考えながら車を走らせた。最後に人の気配に無意識に反応した猫が哀れでならなかった。「ペットを捨てたやつが悪い。」そう思っても深い後悔が残った。
渡船場に着いて、しばし放心して、5時半に出船した。乗ったのは2号であった。イガイはまだ全体的には小粒だが、釣りには問題なかった。ただ、2号筏のイガイは相当使われ、とりやすいところについているのは少なかった。あと5,6人使うと厳しい状態だと思った。釣り座は隣の筏に向かったとった。
イガイをパラパラ撒いた後、仕掛けを作って第1投は6時前だった。着底しても反応がなかったので、誘い上げて落としてみた。すると細かいアタリが出始めた。途切れなく触っているのでチヌだと思ったが、なかなか引き込まない。ある程度待って思い切って合わせると乗った。結構なファイトを見せて上がってきたのは40㎝ほどのチヌだった。幸先の良いスタートだった。
連発するかと思ったが、その後30分やってもアタリはなかった。手繰り上げた仕掛けを対面の筏際に投げた。筏上のラインを少しずつ海に入れているとラインが走っているに気がついた。急いで余分なラインを巻いて合わせるとのった。上がってきたのは30㎝台だった。上層で食ったと思われた。次のアタリがでたのは、6時50分だった。これも底より上で食ってきた。重量感のある引きを見せたのは久しぶりの良型だった。
明らかに浮いている感があった。次の1投も底ではアタリがなかったので、2メートルほど引き上げて待っているとあたってきた。連発で釣れたのは30㎝台だった。約1時間で4枚釣れ、今日はいけそうに思ったが、7時半にバラした後アタリがなくなった。小アジでもいたら、釣り上げてノマセ釣りをするつもりだったが何もいない。両貝にも反応が薄いか、あっても雑魚アタリばっかりだった。パラソルの下は快適であったが、パラソルからは灼熱地獄ででられない。9時には止めたくなった。10時には当日はよくある朝一だけの日だとわかった。そして、11時、魚を放流することにした。朝にあんなことがあったので、今日は殺生をせずに釣った魚は猫の供養に海に捧げようと決めていた。スカリの中で、弱ってしまっては意味がないと思った。1匹浮いていたが、空気を抜くと何とか泳いでいった。
そして12時過ぎ、納竿した。他の4人の釣り人はみなさん頑張られていた。真っ青な空と海の間を船はスピードを上げて港に進んでいった。陸に上がると、白杉の漁港をブラブラ散歩しようかと思ったがすぐに帰ることにした。ペットの幸せは飼い主が握っている。我が家のサボに早く会いたくなった。
釣果:4枚(47・41・37・35)