7月3日(水)   大丹生(晴れ)

 たまたま休みを取っていたら、大雨の後の日に当たった。雨後の茶色い海を期待して、大丹生に向かった。途中、黒鯛釣具店で団子の中、オキアミ、サナギを購入し、5時半頃、到着した。海は濁ってはいるが、渓流でいう笹濁り程度であった。澄み切っているよりは随分ましだが期待外れだった。乗った筏は2号で、昨日も雨の中、牡蠣作業がされたようなので、はじめから隣の筏を向いて釣り座を構えた。

       

 最初はイガイでやった。大丹生のイガイだが、あるにはあるが、その多くは巨イガイで、フロートにがっちりついている。剥がすのには力がいるし、適当な大きさのものは極めて少ない。イガイ釣りをやるというより、イガイで釣るのがせいぜいであった。ただ、少ないイガイで小粒を撒きながら、やれるところまでイガイ釣りをしようと思った。まずはイガイの丸貝を落とし込むが反応がなかったので、巨イガイの両貝を落とすと、アタリがある。外道はそれなりにいるようだった。2回、両貝を瞬殺された後、再びイガイの丸貝を落とし込む。するとしばらくするとスーと穂先が持ち込まれた。素バリだった。「しまった。今のは・・・。」次を落とし込むとすぐに触ってきた。「チヌや。」アワセのタイミングを慎重に図っているとアタリがなくなった。「しまった!とられた。」チヌがいることは確信した。次の1投では着底間際よりアタリがあり、着底するとすぐに押さえ込んできた。今シーズン初めてイガイで掛けたことまではよかったが、相手が強い。筏下に潜ろうとする。必死に耐えた。底での我慢比べが結構続いた後、徐々に上げってくる。すると今度は前方に向かいだした。普通ならとれる可能性が上がるのだが、前方の牡蠣筏が気になった。すると強い引きがとまった。あれと思ったら、ラインが切れた。それほど走られてはいないと思っていたが、前方の牡蠣筏に入られてしまったようだった。お決まりの朝一ばらしで落胆した。

 残念だったが、まだチャンスはあると再び集中する。ばらしの影響でアタリはでない。30分ほど経過した6時40分頃、久しぶりにイガイを触ってきた。しばらく待つが、押さえ込んではこないので、聞いてみると重さを感じた。思い切ってあわせるとのった。今度は最初の1枚ほど引かないが、チヌであることは間違いなかった。無事40㎝オーバーをGET。産卵後間もないのか、尾びれがボロボロで傷のあるチヌだった。

       

 とにかく1枚釣れてほっとしたので、落ち着いて次を狙う。小粒のイガイに代えた7時過ぎ。大きな当たりで、34㎝が釣れた。さらに次の1投も連発した。とれるか自信がない程の強い引きであったが無事46㎝が釣れた。いい型のチヌが釣れて満足だった。7時15分の段階で3枚釣れ、順調だった。

      

 しかし。その後30分ほどアタリがでない。アタリが止まっても、9時頃から2度目の時合いがくることは考えられた。ただ、イガイの数が少ない。巨イガイを剥がして、手頃なサイズを集める気にはなれなかった。団子釣りが可能か、サナギを落としてみた。すると触ってくる。明らかに何かが、サナギをかじってくる。外道かもしれないが、サナギでもやれる気がした。時刻は8時になった。手持ちのイガイでは、せいぜい10時が限界。迷ったが活性のあるうちに団子釣りに切り替えた。しかし、よいアタリがでない。そして、9時頃には雰囲気はなくなってしまった。団子釣りがいけないというより、潮がよくないと思った。釣れたのは朝一。朝一は潮が悪くても釣れる。濁った海での爆釣を期待していただけに残念だった。

 時刻は10時15分になった。アタリがないので、筏周辺をイガイで10分ほど探って釣り座に戻ってきた。団子の中切りでサナギコーンを落とし込んだ。しばらくして、コンコン、クゥイクゥイといった軽いアタリがあり、あわせてみた。すると予想外の重量感。「お!チヌや。サナギにきた。」と喜んだのも一瞬で、すごい引きがはじまった。大物であることはすぐわかった。猛烈に突っ込むが、糸の強度を信じて一切糸は出さずに竿の弾力だけで耐えた。大物は最初に走らすと勢いがついてしまうと考えている。それから徐々に巻き上げるが、何度も何度も強い突っ込みをみせる。変な方向に行かれたら、即アウトだとは思った。そして表層近くで筏下に突っ込んだ。耐えてしばらくして引きずり出すとその姿が見えた。「でかい!」年なしが釣れた。

     

 死闘で疲れた。納竿してもよかったが、せっかく団子釣りで釣れたので、追加を狙おうと思った。しかし、アタリはでない。2時間が経過し、大丹生のゴールデンタイムは過ぎてしまった。「突然の一撃か・・・。」オキアミやイガイの両貝には、アジを中心に反応はよかった。でも、私はサナギで釣るのが好きなので、サナギやコーンが中心。しかしながら気力が切れて12時半から寝ることにした。その後、何かの気配を感じて起きた。見ると西田さんの船が全速力でこちらに向かってくる。「あれ?この時間で見回りか、珍しい。」筏に到着した西田さんがいうには、家から見て私の姿が見えなかったので、急いで来たそうだ。今日に限って変な場所に釣り座を構えたので、寝ると道具の陰に隠れてしまったようだった。西田さんの気持ちを考えると申し訳ない気持ちになった。これだけの暑さになると、渡船屋さんも運んで終わりではなく、いろいろ気を遣わないいけないのだなと感じた。結局、その後もアタリを出せなかったので、14時に納竿した。チヌは年なしを含めて3枚は放流した。今回は空気抜きをせず、ハリも飲まれなかったので、元気に回復して欲しいと思った。

 陸に上がるとがじろうさんが来てくれていた。15時過ぎまで話した。一番暑い時間だが、風があり、夏の海を見ながら気持ちのよい時間だった。来年は今の仕事をしていることはないと思う。この先、同じ景色でも違って見えるかもしれない。間違わないことが最優先される仕事をやってきたが、私はどうも昔から、放浪への憧れがある。根は適当が好き。あまり見なかったが、「男はつらいよ。」の世界があこがれなのかもしれない。がじろうさんと別れて、帰路についた。頭の中は、すでに持ち帰りの仕事のことでいっぱいであった。

           
   
釣果:4枚(53・46・43・34)